Shintaro.media
矢野直人さんVol.1
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大学出るまで、焼き物にまったく興味なかったんです。
でも、いまは土掘りが一番楽しい。

矢野 直人さん

矢野 直人さん

唐津焼

1976年 唐津市に生まれる
1994年 5年間アメリカ留学
2002年 佐賀県立有田窯業大学校卒業
2003年 佐賀県立有田窯業大学校嘱託講師
2004年 自宅・殿山窯(唐津市鎮西町名古屋)にて作陶始める


焼き物学校は 23 歳のとき。留学先で焼き物の道に行こうかな、と。

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有田の焼き物の学校にいったのが23歳の時なんですが、実はそれまでまったく興味なかったんです。

学生時代にアメリカに留学してた頃があって、学校では油絵とか描いてたんです。

もともと物を作るっていう仕事には興味あったんですね。で、アメリカもそうですが、外国っていろんな国の人がいて、みんな宗教観などもある程度しっかり持ってますよね。自分はその頃はそんなことも深く考えたこともなかったんです。

仏教 というのでもありません。祖父は牧師先生でしたしね。

そんな感じなので、留学して得たことは、自分の考えというか、人生観についての浅さっていうんでしょうか(笑)。

自分は親に仕送りしてもらって、なんかいい感じにやってる気分でいたけど、全然たいしたことないなって。

で、家は焼き物してるし、「やってみるか」ぐらいの感じですね、きっかけは。そのとき4年生の終わりぐらいだったんですけど、家に電話して「家で焼き物やっていいかな?」って言って帰ってきたんです。

僕は男3人兄弟の一番下で、なんでも好き勝手やってきたという感じで、こうしろああしろっていうのもなかった。悪さしたらちょっと叱られるってぐらいで。なので、父も特別反対するわけでもないですし、「お前が考えて決めたんだったらやったらいい」っていう感じでした。

そしたら父も独学で焼き物をやってきてたんで、基本的なことから始めたほうがいいというので学校でもいったら?ってことで、焼き物の学校に行ったんですよ。留学から帰ってきて、10年ちょっと経ちましたね。

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オブジェ作りから日常使いの器へ。
妄想しながら、土を掘ってます。

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父親も唐津焼をやってたので、なんとなくのイメージがある中で、30歳くらいまではオブジェみたいなのも作ってたんです。

だけど、ちょうど30歳ぐらいの頃に、よくあるような展示会を見に行ったら、古いものかが全く別物に感じたというか…。自分にとってはいい意味でそれがきっかけです。日常使う器に真剣に取り組み出したのは。今ですね、土掘ってる時が一番楽しいです。

なんかこう…ね、先輩方の抹茶椀が10万円とか20万円万とか、あるいは昔のものもいいなと思ったりして、どういう素材でやればできるんかなと思って山とかに行くわけですよ。で、そこで探し当てた土があれば、なんとなくできるんじゃないかと勘違いしちゃうんです。

大きな花器じゃなくって茶碗なんだから、小さなスコップの土で「はい、10万円」って言いながら土を掘ったり。

今日は300万分掘ったからまあいいか、みたいな感じで(笑)。全然できるわけないんですけど、土彫りって、そんなくだらない妄想もできちゃうんで。

これでいいのができるかもしれない、今日はまあこれぐらいにしといてやろうってブツブツ言いながら(笑)。

ヘンですよね。

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土掘ってたら水晶や金が出ることも。
でも、本業じゃありませんから(笑)。

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唐津っていうのは砂岩地帯と花崗岩地帯に分かれてて、古い唐津焼は全部で200ぐらい窯があるといわれてるんです。

そのうち2つ以外は全部砂岩地帯に入ってるんですね。古い唐津焼の中でも、何々系古唐津という風に分けていくと、きれいに地層で分かれてるんです。だから原料の種類って分類されていることになります。

で、土を掘るお話に戻るんですけど、掘るといっても、崩れた岩なんかを使います。けっこうそういう崩れたところに、粘土質にあってるものなんかがあるんですよ。地主さんに「ちょっといただきます」、なんてご挨拶に行ったり、面白いです。意外に伊万里や有田の方では、水晶も出たりしますよ。大きいのじゃないですけど、小さい結晶になったようなキラキラした粒が岩に付いてたりします。

地層学者みたいなおじさんについていったりするとですね、水晶だけじゃなくって、金が採れてたりすることもあるわけです。

今度一緒に行ってみますか?(笑)。

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Shintaro.mediaより

初めてお会いしたのは、2013年3月。唐津の料理旅館「松の井」さんのご紹介です。

私たちの突然の来訪にも快くお迎えいただき、自宅にある窯やギャラリーで色々お話をお聞かせくださいました。

夏には自宅から見えるちょっと入り込んだ港で、犬と一緒に泳ぐという矢野さん。とても素朴ながら、おじいさま、お父さんの自由な気風を受け継ぎ、決して気負いすぎることなく、作陶を愉しんでおられる感じがとても気持ちよかったです。

その人柄と、最初に出会った黒唐津に一目惚れで、お付き合いが始まりました。

今回は、少しユーモアっぽい部分をご紹介させていただいています。