奈良県大和郡山市生まれ。
OLを経験ののち、作陶の道へ転向。
2006年 京都伝統工芸専門学校(現・京都伝統工芸大学校)卒
山本長左氏に師事、4年間陶磁器絵付け(染付)を学ぶ
2010年 石川県立九谷焼技術者自立支援工房にて3年間制作活動を行う
2013年 石川県小松市にて独立
実は、女子大を卒業後、企業でOLとして働いていました。
陶芸の道を目指そうと思ったのは、偶然手に取った雑誌がきっかけです。京都にある伝統工芸を学ぶ専門学校が特集されていたんですが、その学校を卒業すると陶芸家に弟子入りできると書いてあり、大きな魅力を感じたんです。
というのも、もともと絵を描くのが大好きで、OL時代もイラストのコンテストに応募したり、小説の挿絵を描いたりしていました。でも、平面の紙だけではなく、立体の陶磁器にも絵を描きたい――そんな強い思いから、陶芸の道に進むことを決意しました。
弟子入りしたのは、九谷焼の山本長左先生。染付で著名な先生です。工房に見学に伺った時に見た、描くもの一つひとつに命を吹き込むような、いきいきとした“線”にどうしようもなく惹かれ、「ここで修行したい!」と弟子入りをお願いしました。
私が独立した今でも、親方って呼ばせていただいています。実際に弟子入りしてから、修行を積むほどに、親方の描く“線”が持つすごさや奥深さをさらに感じるようになりました。
植物も、動物も、人間も、そこに描かれるものすべてに「命が宿る」というか……ただ丁寧で緻密というだけではなく、不思議と命の力を持った“線”なんです。古い時代の作品の写しを描く場合も、親方が描くと題材のポーズや構図が同じでも、親方だけの「命」が宿っているように見えます。
何と言うか……私だと「線で描いている」感じなのに対して、親方は「線で表現している」という感じなんです。その“感じ”を上手く説明するのは難しいんですけど、たった一本の線でも全然違うんですよね。筆の入れ方、止め方だけで、いきいきとしたおもしろさが生まれてるような…。
とにかく親方は、遊び心が大切で、少し肩の力を抜けばいいって教えてくださったんですけど、なかなかそんな風にはいきません。私にはまだまだ到達できない世界ですが、そんな山本長左という素晴らしい親方との出会いが、今の私につながっています。
私が生まれ育った奈良県にある正倉院には、さまざまな美しい模様を施した宝物がたくさん納められています。
そこに描かれた動植物のいきいきした様子、唐草など装飾的な文様、ペルシャやローマなどの西方の影響を受けたエキゾチックな雰囲気に抱いていた憧れは、今の作品作りのベースになっているような気がします。
唐草模様を自分なりにアレンジしたり、風が吹いたときの竹の葉ずれのざわざわした感じや、満開になりかけの桜の花がはらりと散っているような動きなど、自然の一瞬の“揺らぎ”を表現したいと思っているんです。
動物たちを描くのも本当に楽しいですね。二羽の小鳥がお互いさえずりあったり、リスがじゃれあったり。
ただ動物がそこにいるというのではなく、美しい植物の中で動物たちがいきいきとしている一瞬を描きたいと思っています。楽しそうなのもいれば、そっぽ向いていたり、どっかに行っちゃったのもいたり(笑)。
私はあえてたくさんの色味を使わず、基本的に同色系の濃淡、差し色、金色を使って描いています。抑えた色味だからこそ表現できる“華やかさ”を大切にしながら、物語を表現したいと思っているからです。
器を見た人が「二羽の小鳥はどんなお話しているのかな」「このリスは一人ぼっちなのかな」とか、想像するシーンを思いながら、ストーリーを考えるのはとても楽しいですよ。
その楽しさも器を使う人と共有できたらいいな、と思っています。次は、物語の季節感まで表現したいので、ピンクや黄色、紫などの違う色味も加えて、描いていこうと思っています。
Shintaro.mediaより
陶芸家・竹内 瑠璃さんの人となりVol.1です。
瑠璃さんとは、2012年、九谷焼の北村和義さんに石川県立九谷焼技術者自立支援工房をご案内いただいた時に作品をお見かけして、その緻密さに息を飲んだのが最初。瑠璃さんの世界に一気に引き込まれ、工房へ入ってしまったのが始まりでした。
聞けば、私たちが大好きな妙泉陶房さんで修行をされ、独り立ちを始めた頃とのこと。見えない部分にも世界がある。だから、香炉の蓋の裏や、作品の裏にまで、瑠璃さんが創造する自然の物語が描かれているとのこと。その後、師匠である山本長左さんを訪れた時には、「もうちょっと力抜いてもいいんじゃない?」と言われるほど、その細かさには誰もが舌を巻きます。
ただ細かいだけ、ではなく、そこに命をイメージして見る者の気持ちをかきたててゆく…初めてのニューヨークの作品展で早速コレクターがついたというその世界に、どうぞ浸ってください。